波動式湧昇ポンプは、波による上下運動と逆止弁を利用し、設定した取水深度の海水を表層へ運ぶ装置です。外部電源や燃料を必要とせず、簡素な構造で継続的に作動することを目指しています。NPO ESCOTでは、2019年から開発と実証を進めています。

自然の湧昇海域では、低温で栄養塩を含む下層水が表層へ供給され、植物プランクトンを起点とする豊かな海洋生態系が形成されます。人工湧昇は、この自然現象を参考に、人為的に水交換を促す技術です。

現在、エスコットでは、比較的浅い層の低温水を表層へ供給することによる局所的な水温緩和、水交換の促進、養殖環境の改善を主な研究対象としています。取水深度は水温だけで決めず、溶存酸素(DO)、塩分、クロロフィルなども確認しながら、安全性と効果を検証します。

植物プランクトンの生産を通じたCO₂吸収や、広域的な海面冷却による台風強度の抑制については、将来の研究構想です。実現には、必要な規模、持続性、生態系への影響などを慎重に検証する必要があります。