本プロジェクトは人為的なエネルギーを用いることなく栄養塩豊富な低層水を表層に運び上げ、 海洋の肥沃化とCO2回収(ブルーカーボン・テクノロジー)に関するものである。
また、同時に夏季の海面水温冷却による台風(ハリケーン、サイクロン)発達制御技術の開発可能性に関するものでもある。

波力のみで海底の水を表層に汲み上げ海面で拡散させる手段の一つに波動式湧昇ポンプによる人工湧昇がある。
NPO ESCOT では2019年から大規模な資源・エネルギー投入を必要としない簡易で普及性に富んだ逆止弁方式の波動式湧昇ポンプ開発に着手した。

世界の漁場は,海洋の総面積の約 0.1%の湧昇海域(潮流、海底地形等の影響、低層の海水がで表層に押し上げられる海域)に集中し、その漁獲高は 世界全体の50%を占めると言われている。
ペルー沖,カリフォルニア沖,南西アフリカ沖などが湧昇流発生海域として知られている。
この様な海域では海面水より栄養素が豊富な低層水が表層に上昇(湧昇)する。

これによる光合成で植物プランクトンの生産が行われ, それに続き魚類など二次生産が行われ,結果として良好な漁場となる。
仮に湧昇海域をコストと資源・エネルギー投入の最も少ない方法でもう0.1%増やすことが出来れば世界の食糧問題は大きく改善する。
人工湧昇海域を陸から遠くない沿岸域につくれば遠洋に出る必要性は薄れ、漁船の燃料代、リスク、労働負荷は低減する。

増えすぎた植物プランクトンは大気中のCO2を大量に回収し、その後、寿命を迎えマリンスノー形態で海底に堆積・固定される。

また、海面水温が異常上昇する夏場、低層から低温水を大量に汲み上げ海面水温を下げられれば台風(ハリケーン、サイクロン)への水蒸気供給量を減らし、台風(ハリケーン、サイクロン)被害を軽減できる。

日本においても大型台風の発生頻度が増し、2019年には1兆円以上の災害規模を東日本にもたらした。
現在、海面水温上昇が26.5℃以上になると急速にパワーアップされることが知られている。

波動式湧昇ポンプの特徴は波(振幅)が高いほど大量の低層水を汲み上げ表層水温を下げる。
東京の場合、約1000㎞程の南海上で台風が生まれた時点からその波動がウネリとして近海に到着する。
そして低層冷水の湧昇が始まり、水蒸気供給を事前に、自動的に抑制する。