湖上野菜栽培の再評価
― 肥料価格高騰時代における「水域カスケード利用型農業」の可能性 ―
NPO法人エスコットでは、過去に「将来の食料不足時代への備え」の一環として、湖沼上での野菜栽培に関する実験的研究を行っていました。
当時実施した千葉県・手賀沼での湖上栽培試験では、特に空心菜(エンサイ)が極めて良好な成長を示しました。
手賀沼で確認された特徴
当時の手賀沼は富栄養化が進んでおり、水中には農業由来を含む豊富な栄養塩が存在していました。
その結果、
- 肥料を投入しなくても十分な生育が可能
- 夏季でも旺盛に成長
- 葉物野菜の少ない時期の供給源となる可能性
- 害虫被害が非常に少なく、農薬使用を大幅に低減可能
などの特徴が確認されました。
特に注目されたのは、「陸上で投入された肥料の一部が河川や湖沼へ流入し、その養分を再活用できる可能性」です。
一般に、農地へ投入された肥料の相当部分は最終的に水域へ流出していると考えられています。
つまり湖上栽培は、
「流出した養分を再び食料生産へ戻す」
という、カスケード型資源循環の一形態として捉えることもできます。
手賀沼での空心菜栽培現場
手賀沼に浮かぶ野菜用イカダ

成長具合を記録する学生ボランティア

船で収穫した空心菜

千葉大学園芸学部との試食会

釣り堀での栽培実験

水面に伸びる水に浮く中空の茎

節から延びる髭根

湖上ならではの技術的工夫
本方式は実質的には“水耕栽培”であるため、根域への酸素供給が重要となります。
そのためエスコットでは、
- 筏に風受け板を設置
- 波や風で適度に揺れる構造
を採用し、水中の根域周辺に酸素と養分が供給されやすい構造を試みました。
現在で言う「自然エネルギー利用型の受動的循環システム」に近い発想です。
全体構成と機能

リサイクル材を使用したイカダ

防鳥対策の必要性
一方で、実験ではオオバンなどの食植性鳥類による食害も確認されました。
このため、
- 防鳥ネット
- 簡易フレーム構造
などの対策が重要であることも分かりました。
現在だからこそ再検討すべき理由
近年では、
- 中東情勢不安による肥料価格高騰
- 肥料供給リスク
- 気候変動による農業不安定化
- 富栄養化対策
- 食料安全保障
などが世界的課題となっています。
その中で、
「水域へ流出した栄養を再び食料へ戻す」
という考え方は、今後さらに重要になる可能性があります。
特に、
- 農地投入肥料のカスケードリサイクル
- 未利用水域の活用
- 夏季葉物野菜供給
- 低農薬化
- 地域循環型農業
といった観点からも、湖上野菜栽培技術は再評価の余地があると考えています。
エスコットには、当時の試験データや構造ノウハウが残されており、今後のRE(Resource & Environmental)活用技術として、再展開を検討していきたいと考えています。
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