空き家を「地域の資源」に

Akiya Green Lab Project 始動

全国で増え続ける空き家を、単に管理・解体の対象として捉えるのではなく、食料生産、エネルギー利用、備蓄、減災技術の研究拠点として活用できないか。

NPO法人エスコットは、この考えに基づき、築約60年の建物を活用した

「Akiya Green Lab Project(空き家グリーンラボ・プロジェクト)」

を開始しました。

このプロジェクトは、空き家が抱える社会的課題と、食料、エネルギー、防災、気候変動といった複数の課題を組み合わせ、小規模でも実践できる地域分散型の生活・防災拠点づくりを目指すものです。


空き家を、管理負担から地域資源へ

人が住まなくなった空き家は、換気不足による劣化、害虫・害獣の侵入、庭木や雑草の繁茂、火災、防犯など、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。

一方、空き家には、建物、屋根、窓、庭、収納場所、電気設備など、活用可能な資源が残されています。

これらを適切に改修・管理すれば、空き家は次のような機能を持つ地域拠点に転換できる可能性があります。

  • 野菜、苗、ハーブなどを育てる小規模な食料生産拠点
  • 太陽光発電や蓄電池を利用する分散型エネルギー拠点
  • 太陽熱や室内の余剰熱を利用する蓄熱・育苗実験施設
  • 保存食や水を保管する備蓄拠点
  • 災害時に必要となる物資・器具・機材の分散保管場所
  • 身近な材料を活用した減災技術の研究開発拠点

Akiya Green Lab Projectでは、これらの機能を一度に完成させるのではなく、既存の建物を使いながら、小規模な実験を積み重ねていきます。


1.空き家を活用した食料生産

最初の取り組みとして、室内の窓際や日当たりのよい場所を利用し、サツマイモの苗、ハーブ類、野菜などの栽培実験を始めています。

特にサツマイモは、食料として利用できるだけでなく、苗を越冬させて翌春の栽培につなげられる可能性があります。
毎年購入している苗の一部を自ら育成できれば、栽培費用の軽減や、地域内での苗の確保にもつながります。

現在は、サツマイモから伸びたつるを切り分け、水挿しによって発根させた後、鉢へ移植する方法などを試しています。

また、豆苗などの再生栽培や、ミントをはじめとするハーブ類の栽培も行っています。栽培容器には、食品容器や空き瓶など、身近にあるものを可能な範囲で再利用しています。

こうした実験を通じて、空き家の室内環境で育てやすい作物、必要となる日照、温度、水分、換気などの条件を確認します。

【写真:築空60年近い空き家を活用したエスコット事務所】

エスコット事務所入り口階段

写真左がドア

2階事務所外観

2階事務内側から:ゴーヤ、キュウリなど出来ているが目的は主に遮光

【写真:屋内栽培実験】

サツマイモ、豆苗、ハーブ類の室内栽培実験




2.太陽光発電・蓄電・蓄熱の活用

空き家の屋根や日当たりのよい場所は、太陽光や太陽熱を利用できる可能性があります。

太陽光発電と蓄電池を組み合わせれば、平常時には照明、換気、通信機器、栽培設備などへ電力を供給し、停電時には最低限の非常用電源として活用できます。

Akiya Green Lab Projectでは、将来的に次のような利用を検討します。

  • 太陽光発電による電力の確保
  • 蓄電池への充電と停電時の利用
  • 冷蔵庫、LED照明、換気扇、給水ポンプなどへの電力供給
  • パソコン、スマートフォンや情報通信機器の充電
  • 室内温度や消費電力の計測
  • 太陽熱を利用した育苗環境の保温(順次導入)
  • 食料生産と再生可能エネルギーを組み合わせることで、外部から供給される電気への依存を抑えた、小規模な栽培システムの可能性を検証します。
  • 日中の熱を蓄え、夜間に利用する簡易蓄熱(御宿実験場ではフロ加温で実証済み)

御宿試験場:太陽熱、電気はほぼ100%自給可能

事務所屋根では合計680w.hrを発電(系統連結なし)

2kw・hrの蓄電池


3.食料と種苗の分散備蓄

大規模災害が発生すると、道路や物流網の寸断によって、食料や生活用品が届きにくくなることがあります。

空き家の一部を適切に管理された備蓄場所として利用できれば、地域内に食料を分散して保管することができます。

備蓄対象として、次のようなものが考えられます。

  • 米、乾麺、缶詰、レトルト食品
  • 飲料水・トイレ/洗濯用水(雨水)
  • 長期保存が可能な野菜
  • 種子、種芋、栽培用資材
  • 調味料や簡易調理用品
  • ペット用の食料
  • 衛生用品

ただし、空き家での備蓄には、室温、湿度、害虫、害獣、カビ、浸水、盗難などへの対策が必要です。

そのため、単に物資を置くだけではなく、保管条件の記録、定期点検、消費期限の管理、古い備蓄品から使用するローリングストックなどの方法を検討します。


ローリング・ストック(ワインが多すぎ・・・?)

薄いタンク+圧力センサー付き浅井戸用ポンプ

雨水利用トイレ(渇水時には水道水との切り替え可能)

4.災害支援物資の保管拠点

食料だけでなく、災害時に必要となる支援物資を複数の空き家に分散して保管できれば、地域防災力の向上につながる可能性があります。

例えば、次のような物資が想定されます。

  • 携帯トイレ
  • 毛布、寝袋、防寒用品
  • 軍手、ヘルメット、雨具
  • 懐中電灯、乾電池、充電器
  • 救急用品
  • 給水容器
  • 簡易調理器具
  • ブルーシート、ロープ、工具
  • 衛生用品、清掃用品
  • 災害時の情報伝達用品

自治体の大規模な防災倉庫を補完する形で、小規模な備蓄拠点を地域内に分散させることができれば、災害発生直後の初動対応に役立つ可能性があります。

非常時に役立つキャンプ用品などは通常時はkashikari.rentサイトにて貸し出す事で収益を確保できる可能性がある。

医薬品、燃料、危険物などについては、保管方法や法令上の条件を十分に確認する必要があります。

5.身近な材料を利用した減災技術の研究

Akiya Green Lab Projectは、単なる栽培施設や備蓄倉庫ではありません。空き家を実験場所として活用し、低コストで導入できる減災技術の研究開発も行います。

現在、建物内へのネズミなどの侵入を抑えるため、ヘビを模したロープ状の模型を分電盤周辺に設置し、忌避効果の有無を観察しています。

これは効果が確立された対策ではなく、あくまでも身近な材料を使った実験です。今後、侵入経路の封鎖、餌となるものの除去、粘着シートやセンサーの活用など、一般的な対策と組み合わせながら効果を確認します。

【写真挿入】
今後は、このほかにも次のような研究を検討します。

  • 火災や漏電を防ぐための点検方法
  • 簡単だが高強度のシリコンによる屋根瓦落下止め対策

重要なのは、新しい高価な設備を導入することだけではありません。既存の建物と身近な材料を利用し、安全性を確認しながら、地域で再現できる技術へ発展させることです。

空き缶式感震ブレーカー:缶の中の水の量と紐の長さでブレーカーが切れるか調整試験が必要

屋根瓦落下防止:シリコンは10年以上、トラックフォロー修理テープは5年程度の耐久性


6.平常時と災害時をつなぐ拠点へ

防災施設は、災害が起きたときだけ使用する形では、管理が行き届かなくなることがあります。

そのためAkiya Green Lab Projectでは、平常時には栽培、研究、学習、交流の場所として利用し、災害時には電力、食料、水、資材などを提供できる拠点へ切り替える「日常利用型の防災」を目指します。

平常時に人が出入りし、植物を育て、設備を動かし、備蓄品を点検することによって、建物の異常にも早く気づくことができます。これは空き家の劣化防止や防犯にもつながります。

空き家対策、食料生産、エネルギー、防災を別々の課題として扱うのではなく、一つの場所で結び付けることが本プロジェクトの特徴です。

緊急時の作業用ヘルメット

水害発生時のライフジャケット

移動可能なカセットコンロ式発電機(500w・hr)

車での移動が困難な場合に役立つ自転車保管


プロジェクトが目指す6つの機能

Akiya Green Lab Projectでは、空き家に次の6つの役割を持たせることを目指します。

1.空き家対策

定期的に人が利用することで、建物の劣化、放置、害虫・害獣、防犯上の問題を抑えます。

2.食料生産

サツマイモの苗、野菜、ハーブなどを育て、都市部や住宅地でも実践可能な小規模栽培を研究します。

3.蓄電・蓄熱

太陽光・太陽熱を活用し、平常時の省エネルギーと停電時の非常用エネルギー確保を目指します。

4.食料貯蔵

保存食、飲料水、種子、種芋などを適切に管理し、地域内での分散備蓄を検討します。

5.災害支援物資の貯蔵

防災用品や生活用品を保管し、災害発生直後の地域支援に役立てます。

6.減災技術の研究開発

低コストで再現しやすい断熱、防災、害獣対策、エネルギー利用、遠隔監視技術などを実験します。


今後の実験予定

今後は、現在の栽培状況を継続して観察するとともに、次の項目を段階的に検討します。

  • サツマイモ苗の越冬と春季の苗供給
  • 空き家室内に適した野菜・ハーブの選定
  • 室温、湿度、日照時間と生育状況の記録
  • 太陽光発電と蓄電池による栽培設備の運転
  • 太陽熱・余剰熱を利用した冬季の保温
  • 食料や防災物資の保管方法と点検ルールの作成
  • ネズミ、害虫、カビなどへの対策
  • 災害時を想定した電力・水・物資の利用試験
  • 地域住民、研究者、企業、自治体との連携

実験の結果については、成功例だけでなく、うまくいかなかった方法や改善点も記録し、今後の空き家活用に役立つ知見として発信していきます。


小さな実験から、地域に広がる仕組みへ

Akiya Green Lab Projectは、最初から完成された施設をつくる計画ではありません。

既存の空き家を使い、廃材や再利用品も取り入れながら、小さな実験を積み重ねる取り組みです。

一つの空き家で得られた知見が、別の地域の空き家でも活用されれば、空き家は「地域の負担」から、食料、エネルギー、防災を支える「地域の資源」へ変わる可能性があります。

NPO法人エスコットは、地域住民、自治体、大学・研究機関、農業関係者、企業などとの連携を図りながら、持続可能で災害に強い地域づくりにつながるモデルを目指します。

※本プロジェクトは実験・研究段階です。栽培、蓄電、電気設備、食品・物資の保管、害獣対策などについては、安全性、衛生面、建築・消防・電気関係の法令や専門家の助言を確認しながら進めます。

NPO法人エスコット
Akiya Green Lab Project