SOC方式によるContainer Round Use(CRU)とフリーポジショニング
海上コンテナ輸送では、貨物だけでなく「空コンテナ」も世界中を移動しています。
そして、この空コンテナの移動そのものが、物流コスト、トラック輸送、港湾作業、CO₂排出を発生させています。
NPO法人エスコットでは、輸入後に発生する空コンテナと周辺の輸出需要を結び付ける**Container Round Use(CRU)**を推進しています。
しかし、通常のCRUには一つ大きな課題があります。
輸入に使用したコンテナの所有船社と、輸出で利用する船社が同じとは限らないことです。
そこで考えられるのが、船社所有コンテナを所有船社の許可のもとで第三者がフリーユースし、SOC(Shipper’s Own Container=荷主コンテナ)として別の船社で輸送する方式です。
1.近くに空コンテナがあっても、使えるとは限らない
例えば、ある地域に輸入貨物が到着したとします。
工場や物流センターでデバンニングすると、そこには空になった海上コンテナが残ります。
同じ地域に海外向けの輸出貨物があれば、
「その空コンテナに輸出貨物を積めばよい」
と考えるのが自然です。
これがCRUの基本的な考え方です。
ところが実際には、
輸入コンテナの所有船社=A社
輸出で利用する船社=B社
というケースがあります。
通常、A社のコンテナはA社が指定するCY等へ返却し、B社で輸出するためにはB社の空コンテナを別途輸出企業まで持ってくる必要があります。
つまり、物理的には目の前に使用可能な空コンテナが存在しているのに、
「船社が違う」
という理由で、
A社空コンテナ → A社指定場所へ返却
B社空コンテナ → 輸出工場へ回送
という二つの空コンテナ輸送が発生する可能性があります。
2.そこで「フリーユース」という考え方
この船社の違いを越える方法の一つが、コンテナ所有船社の許可を得て行うフリーユースです。
考え方はシンプルです。
輸入後に内陸で空になったA社所有コンテナを、A社へ直ちに返却するのではなく、A社の承認を得て輸出荷主等が一定区間利用します。
そのコンテナに輸出貨物をバンニングし、輸出に使用するB社の本船へ、
SOC(Shipper’s Own Container)扱い
として船積みします。
海外の仕向地に到着して貨物を取り出した後、空になったコンテナをA社の指定場所へ返却します。
基本的な流れ
輸入
A社コンテナで日本へ到着
↓
工場・物流拠点でデバンニング
↓
A社所有の空コンテナ発生
↓
A社がフリーユースを承認
↓
近隣の輸出企業が貨物をバンニング
↓
B社の本船にSOCとして船積み
↓
海外仕向地へ輸送
↓
海外でデバンニング
↓
空コンテナをA社指定デポ・CY等へ返却
つまり、コンテナの所有権が移転するわけではありません。
また、船社間でコンテナそのものを交換するインターチェンジとも異なります。
所有船社の承認を得て、特定条件・特定区間で第三者がコンテナを利用する仕組みと考えることができます。
3.なぜコンテナ所有船社は、それを認める可能性があるのか
ここがSOC方式の重要なポイントです。
船社にとってコンテナは世界各地に配置しなければならない重要な輸送資産です。
しかし、輸出入の量は地域ごとに均衡しているわけではありません。
ある地域では輸入が多く空コンテナが余り、別の地域では輸出需要が多く空コンテナが不足する、という偏在が発生します。
船社は、この過不足を調整しなければなりません。
そのため貨物の入っていない空コンテナだけを船に積み、需要のある地域へ移動させる必要があります。
これが空コンテナのリポジショニングです。
当然ながら、空コンテナを運んでも中に運賃を支払う貨物はありません。
それでも、港湾でのハンドリングや船舶への積卸し、管理などが必要になります。
4.空コンテナ回送を「輸出貨物輸送」に変える
ここでSOC方式の意味が出てきます。
例えば、日本で余剰となっているA社の空コンテナを、A社自身が空のまま上海へ戻す必要があるとします。
一方、日本には上海向けの輸出貨物があります。
そこでA社がコンテナのフリーユースを認め、その輸出貨物を積載し、B社の本船を利用して上海までSOCとして輸送します。
上海で貨物を取り出した後、コンテナをA社の指定場所へ返却します。
するとA社から見ると、
日本にあった空コンテナが、貨物輸送を利用して上海へ移動した
ことになります。
つまり、
空コンテナのリポジショニングを、実入り輸出輸送と組み合わせる
ことが可能になります。
これをエスコットでは、フリーポジショニング(低負担でのコンテナ過不足調整)につながる考え方として捉えています。
5.荷主だけでなく、船社にもメリットがある
この方式は「近くの空コンテナを輸出企業が便利に使う」というだけの仕組みではありません。
成立条件が合えば、それぞれの関係者にメリットが生まれる可能性があります。
輸出企業
遠方の港やCYから空コンテナを回送する距離を短縮できる可能性があります。
空コンテナ手配の効率化、陸送費低減、リードタイム短縮、CO₂排出削減につながる可能性があります。
陸運事業者
空コンテナだけを長距離輸送する区間を削減できれば、ドライバー拘束時間、燃料使用量、車両稼働の改善につながります。
SOCを海上輸送する船社
他社所有コンテナであっても、SOC貨物として通常の海上輸送を受けることで輸送需要を取り込める可能性があります。
コンテナ所有船社
自社で空コンテナだけを海外へリポジショニングする代わりに、輸出貨物を利用して不足地域へコンテナを移動できれば、空コンテナ回送やハンドリング負担を軽減できる可能性があります。
関係者全体の効果とポイント
| 関係者 | SOC方式によって期待される効果 | ポイント |
|---|---|---|
| 輸出荷主 | 近隣の輸入後空コンテナを利用し、空コンテナの長距離回送を削減 | 陸送距離・物流コスト・リードタイム・CO₂削減・急なコンテナサイズ変更につながる可能性 |
| SOC受け船社 | 自社空コンテナを輸出荷主へ供給せず、SOC貨物として有償輸送 | 他社所有コンテナでも輸送運賃を確保。自社コンテナの準備・差し回し負荷を軽減できる可能性 |
| コンテナ所有船社 | 自社の余剰空コンテナを、輸出貨物を利用して海外の必要地域へ移動 | 条件が合えば、空コンテナだけを海外回送する代わりとなるフリーポジショニングの可能性 |
| 陸運会社 | 港・CYと内陸間の不要な空コンテナ回送を削減 | 走行距離・燃料使用・ドライバー拘束時間を削減し、車両を実輸送へ振り向けられる可能性 |
| 社会・環境 | 国内外の空コンテナ移動そのものを削減 | 同じ輸出貨物量でも、貨物を伴わないコンテナ移動を減らすことでCO₂削減につながる可能性 |
6.実際に行われたSOC方式のコンテナ・シェアリング
NPO法人エスコットでは、この考え方によるコンテナ・シェアリングの試験輸送を実施した実績があります。
実証では、コンテナ所有船社と海上輸送を担当する船社が異なる輸送が行われました。
例えば、所有船社のコンテナを内陸で輸出貨物に使用し、別船社の本船で海外へ輸送し、仕向地でデバンニングした後、コンテナ所有船社の指定CYへ返却する運用が行われています。
つまりSOC方式によるCRUは、単なる理論上のアイデアではなく、実際の輸送で検証されたことのある方式です。
7.陸上の空コンテナ回送も大幅に短縮できる可能性

過去の実証例では、従来、輸出企業が東京港CYから約400km離れているケースで、輸出用空コンテナを東京港から輸出企業まで回送していました。
近隣で発生した空コンテナとのマッチング後は、空コンテナの回送距離が約35kmとなりました。
資料では、
削減距離:365km/回
CO₂削減:4,680kg/年
輸送コスト削減:約160万円/年
という効果が示されています。
これは一つの実証事例の結果であり、すべての輸送で同じ削減効果が得られるわけではありません。
しかし、
「港から空コンテナを取りに行く」のではなく、「近くで発生した空コンテナを次の輸出に使う」
という考え方が、空コンテナ輸送削減に大きな可能性を持つことを示しています。
8.世界規模で考えると、さらに大きなGXの可能性がある
SOC方式によるCRUの可能性は、日本国内のトラック輸送削減だけではありません。
世界のコンテナ物流では、
コンテナが余っている場所から、不足している場所へ空コンテナを移動する
ためのリポジショニングが常に行われています。
もし、
空コンテナが余っている地点
と
そのコンテナを必要としている海外地域への輸出貨物
を組み合わせることができれば、
従来「空」で移動していたコンテナを「貨物を積んだ状態」で移動させられる可能性があります。
これは、
Container Round Use
+ SOC
+ Free Use
+ Free Positioning
を組み合わせた、新しい空コンテナ循環の考え方です。
世界規模でこうした組み合わせを増やすことができれば、空コンテナの陸上回送だけでなく、海上での空コンテナリポジショニング削減にもつながり、海上コンテナ物流全体のCO₂排出削減に寄与する可能性があります。
9.ただし、近くに空コンテナがあれば成立するわけではありません
SOC方式によるCRUには、複数の実務条件があります。
少なくとも、
- 空コンテナの所在地
- コンテナの状態・品質
- コンテナサイズ・タイプ
- コンテナ所有船社
- 所有船社によるフリーユース承認
- 利用可能期間
- 輸出貨物の仕向地
- SOCとして輸送する船社
- SOC受入条件
- 船腹
- 海外での返却場所
- 海外返却までの日数
- コンテナトレース方法
- 通関・管理上の手続き
などを個別に確認する必要があります。
特に重要なのは、
「コンテナ所有船社が、その案件についてフリーユースを認めること」
です。
したがって、近くに輸入後の空コンテナと輸出貨物が存在するというだけで、SOC方式によるCRUが成立すると判断することはできません。
10.まず「空コンテナ」と「輸出需要」を見つける
この仕組みを広げる第一歩は、非常にシンプルです。
どこで輸入後の空コンテナが発生しているのか。
そして、
その周辺に、どこ向けの輸出貨物があるのか。
この二つを可視化することです。
そのうえで、
「同じ船社なら通常のCRU」
「船社が異なる場合にはSOC・フリーユース方式を検討」
という二段階でマッチングを検討します。
NPO法人エスコットは、輸入企業、輸出企業、物流事業者、インランドデポ、船社等の情報を結び付け、
これまで空のまま動いていたコンテナを、できるだけ貨物輸送に利用する物流
の実現を目指しています。
空コンテナを「返す物流」から、「次の貨物を運ぶ物流」へ。
一つひとつの空コンテナ回送を見直すことが、物流効率化、ドライバー不足への対応、輸送コスト削減、そして世界規模のCO₂削減につながる可能性があります。
世界の空コンテナ問題とSOC方式のGX効果
世界では、コンテナの約20%が「空」で移動している
世界の海上輸送では、輸出地域と輸入地域の貨物量が完全に均衡しているわけではありません。
その結果、貨物を届けたコンテナが輸入地域で余る一方、輸出地域では輸出貨物を積むための空コンテナが不足するという「コンテナの偏在」が発生します。
UNCTAD(国連貿易開発会議)は、海上輸送されるコンテナのおよそ20%が空コンテナとしてリポジショニングされていると説明しています。
つまり世界のコンテナ物流では、
約5本に1本が、貨物を積まずに需給調整のため移動している
と考えることができます。
この空コンテナ移動をすべてなくすことはできません。
しかし、その一部でも輸出貨物の輸送と組み合わせることができれば、物流効率化とCO₂排出削減の大きな余地があります。
【グラフ1】「世界のコンテナの20%が空」ではなく「海上輸送における空コンテナ・リポジショニングの割合(約20%)」

世界の海上コンテナ移動のイメージ
実入りコンテナ 約80%
空コンテナのリポジショニング 約20%
出典:UNCTAD等
※世界全体の構造を理解するための概数。
日本での実入り・空別輸出入量:

問題は「コンテナがない」のではなく「必要な船社のコンテナがない」場合があること
輸入後の空コンテナが輸出企業の近くに存在していても、輸出で利用する船社とコンテナ所有船社が異なれば、そのまま使用できるとは限りません。
従来であれば、
A社の空コンテナ → A社指定場所へ返却
その一方で、
B社の空コンテナ → B社CY等から輸出企業へ回送
という輸送が発生します。
物理的には近くに使用可能なコンテナが存在しているにもかかわらず、船社の違いによって空コンテナ同士がすれ違うことになります。
SOC方式によるCRUは、この部分に着目します。
SOC方式なら「空の海外回送」を「貨物を積んだ海外回送」に変えられる可能性がある
コンテナ所有船社の承認を得て、輸入後の空コンテナを第三者がフリーユースします。
そこへ輸出貨物を積み、別船社の本船にSOC(Shipper’s Own Container)として船積みします。
そして海外の仕向地で貨物を取り出した後、コンテナ所有船社の指定場所へ返却します。
これが成立すれば、
日本国内の空コンテナ回送削減
だけではなく、
船社が行う海外への空コンテナ・リポジショニングの一部を、輸出貨物輸送によって代替する
可能性が生まれます。
【図2:従来方式】
輸入 → デバン
↓
A社空コンテナ
↓
A社CYへ空回送
↓
船積み
↓
海外不足地域へ空コンテナ回送
+
B社CY
↓
B社空コンテナを輸出企業へ回送
↓
輸出貨物を積載
↓
海外へ輸送
【図3:SOC方式】
輸入 → デバン
↓
A社空コンテナ
↓
所有船社がフリーユース承認
↓
近隣輸出貨物を積載
↓
B社本船へSOCとして船積み
↓
海外へ実入り輸送
↓
デバン
↓
A社指定場所へ返却
「空コンテナを返す物流」を
「貨物を運びながら返す物流」へ。
「5本に1本が空」という世界を変えられるか
世界の海上コンテナ輸送の規模を考えれば、空コンテナ回送のごく一部を実入り輸送へ転換するだけでも、その潜在的な効果は小さくありません。
SOC方式ですべての空コンテナ問題を解決できるわけではありません。
コンテナ所有船社の承認、コンテナの品質、サイズ、仕向地、利用期間、返却場所、SOC受入船社、船腹、通関・管理条件など、案件ごとの確認が必要です。
だからこそ、
「できるか、できないか」を最初から決めるのではなく、
まず、組み合わせられる空コンテナと輸出貨物を探す。
そこからGXは始まります。
SOC方式に関するQ&A ― 船社・GX効果について
Q.SOCコンテナを積むことで、本船に本来積めたはずの自社空コンテナが積めなくなるのでは?
A.SOCコンテナは単なる空コンテナではなく、輸出貨物を積んだ有償の輸送貨物です。
SOCを海上輸送する船社は、他社所有のコンテナであってもSOC貨物として通常の輸送を行い、正規の海上運賃を得ることができます。
さらに重要なのは、その輸出貨物のために自社の空コンテナを準備・供給する必要がないことです。
通常の輸出では、船社側には輸出荷主へ自社空コンテナを供給するための在庫管理、コンテナの差し回し、CY・デポでの引渡し等が発生します。
SOC方式では、輸出荷主が所有船社の承認を得た他社コンテナを使用するため、SOC受け船社から見れば、
「自社コンテナを1本供給することなく、輸出貨物1本を輸送できる」
という側面があります。
一方、仕向港でも、そのSOCコンテナは貨物を取り出した後、原則としてコンテナ所有船社の指定場所へ返却されます。
したがってSOC受け船社は、自社コンテナとして空コンテナを引き受け、その後の在庫管理や回送を行う必要がありません。
ESCOTの過去資料でも、SOC受け船社のメリットとして、
「他社コンテナでの運賃収益」
「空コンテナ差し替え負荷低減」
が挙げられています。
もちろん、本船スペースには限りがあります。
しかし、SOCは輸出貨物を積載した通常の有償貨物として予約されるものであり、「空コンテナを余分に1本積む」という仕組みではありません。
本船の積載可否は、船腹だけでなく重量、積付け、航路、寄港地その他の運航条件によって決まるため、最終的にはSOC受け船社による通常のBooking判断が必要です。
Q.近くに空コンテナがあれば、SOC方式にした方が必ずCO₂削減になるのでしょうか?
A.いいえ。SOCを使うこと自体をGXと評価するのではなく、「どの空コンテナ移動を削減できたか」で評価する必要があります。
例えばSOCとして利用する空コンテナを取りに行くために大きな迂回輸送が発生すれば、国内CRUによる削減効果は小さくなります。
また、コンテナ所有船社にとって仕向地でそのコンテナが必要でなければ、海外へのフリーポジショニング効果も期待できない場合があります。
したがってSOC方式のGX効果は、
① 国内で削減できる空コンテナ回送
と、
② コンテナ所有船社の海外リポジショニングに寄与できるか
を分けて考える必要があります。
理想的(または成立条件)は、
輸入後に空になったコンテナが輸出企業の近くにある
+
その輸出貨物の仕向地が、所有船社にとってコンテナを必要とする地域である
という組み合わせです。
この条件が成立すると、
国内
従来:
輸入後空コンテナ → 所有船社指定CY等へ返却
+
輸出用空コンテナ → SOC受け船社CY等から輸出企業へ供給
SOC方式:
近隣の輸入後空コンテナ → 輸出企業でバンニング
となり、空コンテナ回送を削減できる可能性があります。
海外
さらに所有船社がコンテナを必要としている仕向地であれば、
従来:
所有船社 → 空コンテナとして海外へリポジショニング
SOC方式:
輸出貨物を積載 → 他船社でSOC輸送 → 海外でデバン → 所有船社へ返却
という形で、貨物輸送とコンテナ・リポジショニングを重ねられる可能性があります。
したがってSOC方式の本質は、
「SOCを何本利用したか」ではなく、
「同じ輸出貨物を運ぶために必要だった空コンテナ移動を、どれだけ減らせたか」
にあります。
ESCOTの過去のマッチング事例でも、輸出貨物量そのものを増やしたのではなく、空コンテナ回送距離を約400kmから約35kmへ短縮し、365km/回を削減した結果としてCO₂削減効果を得ています。
SOC方式も同じ考え方で、案件ごとにCRU前後の空コンテナ移動を比較してGX効果を評価することが重要です。