日本海洋学会で「波力による台風・豪雨緩和の可能性」を発表

日本海洋大学はほぼ満員状態

展示ポスター:

― JAXA、静岡大学、海洋研究開発機構などの研究者と意見交換 ―

NPO法人エスコットは、日本海洋学会の大会において、**「波力湧昇による台風(豪雨)緩和の可能性」**をテーマとしたポスター発表を行いました。

会場のポスターセッションは多くの研究者・学生で活況となり、エスコットの展示についても、海洋観測、海洋物理、気象、海洋工学など、さまざまな立場から意見をいただく機会となりました。

今回特に有意義だったのは、JAXA、静岡大学、海洋研究開発機構(JAMSTEC)をはじめとする研究関係者との直接の意見交換です。

今回の発表でエスコットが提示したのは、巨大な海水塊全体を人工的に冷却するという従来の発想とは異なります。

千葉県御宿町岩和田漁港や伊勢湾で得られた観測データから、海面近くには日射等によって形成される高温層があり、そのすぐ下には相対的に冷たい水が存在することに着目しました。

伊勢湾の観測では、水深5mが海面0.1mより低温だった時間割合が98.1%となり、平均水温差は-2.18℃でした。さらに溶存酸素(DO)も考慮し、「最も冷たい水」ではなく、海面への利用に適した**HCWL(Healthy/安全に利用できる冷水層)**を選択するという考え方を提示しています。

波の力を「気象リスク緩和」に利用できないか

エスコットが開発してきた波動式湧昇ポンプは、波の上下動と逆止弁を利用して低層水を海面へ運ぶ仕組みで、外部電力を必要としません。

通常時には漁場環境改善などへの利用を想定しながら、台風接近時には強くなる波そのものを利用して湧昇量を増加させる。

つまり、

「気象現象によって増大する波のエネルギーを、その気象リスクを緩和する方向へ利用できないか」

というのが今回の研究提案です。

現在の実効湧昇量の想定は1基あたり約326m³/日で、台風時の増幅については今後の実測による検証が必要です。

学会発表から「共同検証」へ

今回のポスター発表で大きな収穫だったのは、研究内容を一方的に発表するだけではなく、異なる専門分野の研究者と直接議論できたことです。

海洋観測データをどう評価するか。

実際の湧昇量をどう計測するか。

海面水温の変化が大気との熱・水蒸気交換にどの程度影響するのか。

そして、それを気象・海洋モデルでどのように検証できるのか。

こうした課題を一つずつ実測・解析していくことが、次の段階になります。

今回の発表は「波力で台風を制御できる」と結論づけるものではありません。

むしろ、御宿や伊勢湾で実際に観測された海面付近の水温構造と、これまで開発してきた波動式湧昇技術を組み合わせたとき、何が起こるのかを科学的に検証していこうという研究提案です。

ポスターでも、御宿での長期耐久・湧昇試験、特許取得済みの逆止弁技術、現場経験を反映した装置構成を紹介しました。

海洋研究と現場技術をつなぐ

エスコットは、研究機関そのものではありません。

その一方で、漁港での長期観測、波動式湧昇ポンプの製作・設置・改良など、現場だからこそ得られるデータと経験を積み重ねてきました。

今回の日本海洋学会での交流を通じて改めて感じたのは、

「現場で生まれた仮説を、研究者の知見と結び付けて検証する」

ことの重要性です。

今後は、今回意見交換させていただいた研究者・研究機関との交流も大切にしながら、実流量の計測、表層・低層水温の同時計測、HCWLの成立条件の検証、大気―海洋相互作用の評価へと研究を進めていきたいと考えています。

海面水温上昇は、漁業だけでなく、酷暑、豪雨、台風など幅広い気象リスクとも関係します。

「海を冷やす」という巨大な発想から、「大気と接する海面をどう扱うか」へ。

今回の日本海洋学会での発表と意見交換を、新しい共同研究につなげていきたいと考えています。


発表題目
「波力湧昇による台風(豪雨)緩和の可能性」

発表者
藤本治生(NPO法人エスコット)

共同研究
一般財団法人みなと総合研究財団(WAVE) 野口孝俊氏

研究協力
国土技術政策総合研究所
御宿岩和田漁業協同組合

データ提供
国土交通省 中部地方整備局

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