酷暑の今、物流からCO₂を減らす

― Container Logistics AI(CLAI)が目指すもの ―

厳しい暑さが続いています。

「今年も暑い」という感覚だけの話ではありません。

気象庁によると、2026年7月の日本の平均気温は、1991~2020年の平均を基準とした偏差で**+1.66℃**となり、1898年の統計開始以降、4番目に高い値となりました。

また、日本の年平均気温は長期的に100年あたり1.44℃の割合で上昇しています。

私たちは今、気候変動や気温上昇を遠い将来の問題ではなく、日々の暮らしの中で実感するようになっています。

では、この問題に対して私たちエスコットに何ができるのでしょうか。

NPO法人エスコットが出した一つの答えが、

「物流の中に残されているCO₂削減の可能性を探す」

ことです。

そして、そのために開発を進めているのが、

Container Logistics AI(CLAI:クライ)

です。


日本では年間約10億トンの温室効果ガスが排出されている

環境省によると、2024年度の日本の温室効果ガス排出・吸収量は、CO₂換算で約9億9,400万トンでした。

これは2013年度から28.7%減少し、初めて10億トンを下回った数字です。

日本全体では確実に削減が進んでいます。

しかし、約10億トンという規模を考えれば、社会のさまざまな場所で、さらに削減を積み重ねていく必要があります。

そこでエスコットが注目しているのが物流です。

2024年度の運輸部門のCO₂排出量は約1億8,700万トン

そのうち貨物車・トラックからの排出量は約7,070万トンで、運輸部門全体の**37.8%**を占めています。

もちろん、トラック輸送は日本の産業や暮らしを支える重要な社会インフラです。

必要な物流を止めることはできません。

だからこそ、

「必要な物流を維持しながら、減らせる走行を減らす」

という発想が重要になります。


その空コンテナ、本当に港まで戻す必要があるのか

海外から貨物を積んだ海上コンテナが日本の港に到着します。

トレーラーがコンテナを工場や倉庫へ運び、貨物を降ろします。

すると、コンテナは空になります。

通常、この空コンテナは港などの指定場所へ返却されます。

一方、その輸入企業の近くに、海外へ製品を輸出している企業があったとします。

その輸出企業は、輸出貨物を積むための空コンテナを港などから運んでくる場合があります。

つまり、

輸入企業 → 空コンテナ → 港

という動きと、

港 → 空コンテナ → 輸出企業

という動きが存在する可能性があります。

そこで私たちは考えます。

「輸入で空になったコンテナを港へ戻す前に、近くの輸出企業へつなぐことはできないか?」

これがContainer Round Use(CRU:コンテナラウンドユース)の基本的な考え方です。


空コンを「戻す」から「つなぐ」へ

例えば、輸入後の空コンテナを港まで100km回送し、その後、輸出企業が港から80km離れた場所まで別の空コンテナを取りに行くとします。

もし条件が合い、その輸入後の空コンテナを近隣の輸出企業へ直接つなぐことができれば、港との間を往復していた空コン回送の一部を削減できる可能性があります。

削減できる走行距離があれば、

走行距離の削減

燃料消費の削減

CO₂排出量の削減

につながる可能性があります。

重要なのは、単に「環境に良さそうだ」と評価することではありません。

CLAIでは、条件が確認できる案件について、

CRUを行わない場合の空コン輸送距離

と、

CRUを行った場合の空コン輸送距離

を比較し、削減距離、本数、車両条件、適切な排出係数などからCO₂削減効果を試算することを目指しています。

1本当たり、月間、年間へと積み上げれば、

「この物流改善によって、どの程度CO₂削減につながる可能性があるのか」

を数字で考えることができます。


ところが「相手」が見つからない

CRUという考え方自体は以前からあります。

問題は、

「どこで空コンテナが発生しているのか」

そして、

「その近くのどこで輸出用コンテナが必要とされているのか」

という情報が、簡単にはつながらないことです。

さらに、距離が近ければ成立するというものでもありません。

実際には、

輸入・輸出の実物流拠点、20ft/40ft、ドライ/リーファー、利用港、船社、返却CY、デバンニング・バンニング地点、空コン発生時期、輸出需要時期、本数・頻度、空コン保管条件、船社によるCRU承認など、多くの条件を確認する必要があります。

人間だけで全国のこうした情報を横断し、組み合わせ候補を探し続けることには限界があります。

そこでAIを使います。


Container Logistics AI(CLAI)

CLAIは、単なる物流会社検索AIではありません。

また、インターネットを検索して、

「この2社は近いからCRUができます」

とAIが勝手に判断するものでもありません。

エスコットが整理・蓄積している物流会社情報、GX・CRU案件、輸出入企業候補、過去の物流情報などを利用して、

輸入後に空コンテナが発生する可能性のある地点

と、

その周辺に存在する輸出需要

を照合します。

輸出案件から、周辺の輸入後空コンテナを探索することもできます。

さらに物流会社についても、単なる会社名簿ではなく、

「どのような案件なら薦めるのか」

「何を得意としているのか」

「どのような案件には薦めないのか」

「過去にどのような経験があったのか」

といった物流実務者の経験・判断をAIが利用できる情報として蓄積していきます。

AIに物流を任せるのではありません。

物流のプロが持つ経験と、各地に点在する物流情報をAIによってつなぐ。

それがCLAIの基本的な考え方です。


CLAIは「CRUできます」とは答えない

CLAIにはもう一つ重要な原則があります。

候補企業が見つかったからといって、

「CRUできます」

とは断定しません。

所在地が近いだけではCRUは成立しません。

輸出入企業だからといって、必ず海上コンテナを利用しているとも限りません。

登録資料にないコンテナサイズ、船社、CY、時期、本数などをAIが推測して事実にすることもしません。

CLAIが発見するのは、

「この組み合わせは、確認する価値があるのではないか」

という候補です。

その後、物流会社、輸入・輸出荷主、船社などに条件を確認し、初めて実際のCRU成立可能性を検討します。

AIによる候補探索と、人間による物流実務上の判断を明確に分ける。

これもCLAIの重要な考え方です。


LOGISTICS × GX × AI

CLAIには3つの要素があります。

LOGISTICS

輸入後に発生する空コンテナと、その周辺にある輸出需要をつなぐ。

GX

不要な空コン回送を減らし、トラック走行距離・燃料使用量・CO₂排出量の削減につなげる。

AI

人間だけでは横断的な照合が難しい多数の物流情報から、「確認する価値のある組み合わせ」を探索する。

つまり、

LOGISTICS × GX × AI

です。

CLAIは、物流業界だけのためのAIを目指しているのではありません。

物流という社会インフラを改善することでCO₂排出を減らし、脱炭素、そして気候変動・気温上昇の抑制に貢献する。

そのための実践的なGXツールとして、エスコットはCLAIを育てていきたいと考えています。


1本の空コンから始める

もちろん、空コンテナを1本効率化したからといって、明日の気温が下がるわけではありません。

一つのCRU案件によって「気温を何度下げられる」と表現することもできません。

しかし、気候変動対策とは結局、一つひとつのCO₂削減を社会全体で積み重ねることでもあります。

1本から10本へ。

10本から100本へ。

1社から1地域へ。

1地域から全国へ。

もし全国各地で発生している空コンテナと輸出需要をつなぐことができれば、その積み重ねは物流部門からのCO₂削減につながる可能性があります。

CLAIが目指しているのは、その「まだ見つかっていない組み合わせ」を発見することです。


CLAI最大の財産は、皆さんが持っている情報です

しかし、AIだけではCLAIは完成しません。

必要なのは、物流の現場にある情報です。

「この地域には輸入コンテナが定期的に入っている」

「この工場から輸出コンテナが出ている」

「この会社は40ftコンテナの扱いに強い」

「ここなら空コンテナを保管できる」

「以前、この地域でCRUを実施したことがある」

「この条件ではうまくいかなかった」

こうした情報一つひとつは「点」です。

しかし、

輸入という点と輸出という点をつなぐ。

荷主という点と物流会社という点をつなぐ。

地域と地域をつなぐ。

AIによって点と点を結ぶことができれば、やがてそれは「線」になり、地域の新しい物流ネットワークへ発展する可能性があります。

CLAIは、エスコットだけで完成させるものではありません。

会員企業、物流事業者、輸出入企業、自治体、関係団体など、さまざまな方が持つ物流情報を少しずつつなぐことで成長していく仕組みです。


酷暑の今だからこそ、物流から始める

2025年夏の日本の平均気温は、統計開始以降最も高くなりました。

そして2026年7月も、統計開始以降4番目の高温となっています。

気候変動という巨大な課題を前にすると、

「自分たちにできることなど小さい」

と感じるかもしれません。

しかし私たちは、その「小さい削減」を実際に見つけるところから始めたいと考えています。

AIが目的ではありません。

コンテナ物流そのものが目的でもありません。

物流をつなぐ。

無駄な移動を減らす。

CO₂を減らす。

そして、その削減を全国へ積み重ねていく。

Container Logistics AI(CLAI)は、そのための道具です。

空コンを「戻す」から「つなぐ」へ。

物流の効率化を、企業のメリットだけで終わらせない。

物流GXを、CO₂削減という社会的価値へ。

NPO法人エスコットは、皆様とともにその可能性を探していきます。


【参考・出典】

・気象庁「日本の年平均気温」
日本の年平均気温は長期的に100年あたり1.44℃上昇。2025年は1991~2020年平均比+1.23℃で、1898年の統計開始以降3番目の高温。

・気象庁「日本の季節平均気温」
2025年夏(6~8月)の日本の平均気温偏差は+2.36℃で、1898年の統計開始以降最高。

・気象庁「日本の月平均気温」
2026年7月の日本の平均気温偏差は+1.66℃で、統計開始以降4番目。

・環境省「2024年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量について」
2024年度の温室効果ガス排出・吸収量は約9億9,400万トン(CO₂換算)。2013年度比28.7%減。

・環境省「2024年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量(詳細)」
2024年度の運輸部門CO₂排出量は約1億8,700万トン。このうち貨物車・トラックは約7,070万トン、37.8%。

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