GHRSST27札幌会議を終えて―波動式湧昇ポンプと「安全な取水深度」を世界へ発信

2026年6月22日から26日まで、北海道大学低温科学研究所で開催された「第27回国際海面水温利用者シンポジウム・GHRSST科学チーム会議(GHRSST27)」に参加し、NPO法人エスコットとしてポスター発表を行いました。

GHRSST(Group for High Resolution Sea Surface Temperature)は、海面水温(SST)に関する国際的な研究・利用者ネットワークです。今回の会議には、各国の気象機関、宇宙機関、大学、海洋研究機関などから研究者・実務者が参加し、海洋熱波、沿岸域の海面水温観測、衛星データ、人工知能の活用などについて議論が行われました。

写真:GHRSST27参加者(北海道大学低温科学研究所、札幌、2026年6月)
出典:GHRSST公式LinkedIn

発表テーマ―冷たい水なら、深いほどよいとは限らない

今回の発表テーマは、

「海面水温と鉛直水質データを利用した、安全な人工湧昇取水深度の選定」

です。

海面水温の上昇を抑えるため、海中の冷たい水を表層へ汲み上げる人工湧昇が考えられます。しかし、深い水ほど水温が低い一方で、溶存酸素が少なく、海洋生態系や養殖生物に悪影響を与える可能性があります。

そのため、「最も冷たい水」ではなく、

・表層より水温が低い
・十分な溶存酸素がある
・生物生産性や生態系への安全性が保たれている

という条件を満たす水層を選ぶことが重要です。

エスコットでは、この条件を満たす水層を「Healthy Cooling Water Layer(HCWL:健全冷却水層)」と名付けました。

伊勢湾データから水深約5mを提案

伊勢湾の2024年・2025年の観測データについて、水深0.1m、5m、10m、15mの水温、溶存酸素、クロロフィルa、塩分、濁度を比較しました。

その結果、水深約5mでは、

・海面より平均約4.5℃低い
・溶存酸素が比較的十分に保たれている
・クロロフィルaも高く、生物生産性が期待できる

という特徴が確認されました。

一方、10mより深い水層では水温はさらに低くなるものの、溶存酸素が低下する傾向が見られました。

この結果から、伊勢湾の条件では水深約5mが、冷却効果と生態系への安全性を両立できる有力な取水深度であると提案しました。

[GHRSST27プレゼンテーション資料(PDF)]
https://npo-escot.org/wp-content/uploads/2026/06/Fujimoto_PosterPitch_GHRSST27.pdf

波動式湧昇ポンプによる現場対策

エスコットが開発を進めている波動式湧昇ポンプは、波による上下運動と逆止弁を利用し、海中の水を表層へ送り出す装置です。

大規模な電力設備を必要とせず、海面水温の上昇が問題となる養殖水域、閉鎖性海域、サンゴ礁周辺などで、局所的な高水温対策として利用できる可能性があります。

衛星や現場観測によって高水温域を特定し、水温と溶存酸素などの鉛直データからHCWLを選び、その水を波動式湧昇ポンプで表層へ送る――。

この「観測・水深選定・現場対策」を一体化した方法が、エスコットの提案です。

[波動式湧昇ポンプ英語版チラシ(PDF)]
https://npo-escot.org/wp-content/uploads/2026/06/chirashi12.pdf

世界の研究者との交流

GHRSST27では、ポスターセッションや各研究発表を通じて、海面水温に関する世界各国の研究者・実務者と意見を交換しました。

チリの養殖関係者からは、波動式湧昇ポンプとHCWLの考え方に関心が示されました。また、オーストラリア気象局、北京からの研究者、JAXA関係者などにも、伊勢湾の解析結果と人工湧昇の可能性を説明することができました。

会議では、海洋熱波の監視・予測、沿岸域やサンゴ礁周辺の高解像度海面水温観測、衛星データの活用、AI・機械学習など、多様な研究成果が紹介されました。

GHRSST27で得られた成果

今回の参加を通じて、エスコットが進めてきた「小規模・低エネルギー・現場実装型」の波動式湧昇ポンプが、国際的な海面水温研究とも接点を持つことを確認できました。

特に重要なのは、単に海面水温を観測するだけでなく、

・どこで高水温が発生しているか
・どの水深から取水するか
・冷却によって別の環境問題を起こさないか
・実際の養殖現場でどのように運用するか

までを一体として考えることです。

今後の取り組み

今後は、次の検証を進めます。

・実海域における水深別の水温・溶存酸素測定
・波動式湧昇ポンプの揚水量と冷却効果の定量化
・ホタテなどの養殖水域における高水温対策への応用
・衛星による高解像度SST観測との連携
・国内外の研究機関、自治体、漁業関係者との共同実証

波動式湧昇ポンプは、海全体を人工的に冷却するものではありません。海洋熱波や高水温の影響が特に大きい養殖水域などを対象に、自然の波力を利用して局所的な環境改善を目指す技術です。

GHRSST27で得られた知見と国際的なつながりを、今後の実証研究と社会実装に生かしてまいります。

実証実験、共同研究、導入検討に関心をお持ちの研究機関、自治体、漁業関係者、企業の皆様からのご連絡をお待ちしております。

NPO法人エスコット
代表理事 藤本治生
お問い合わせ:ser.kashiwa@gmail.com


NPO法人エスコット
〒277-0011 柏市東上町4-17
試験場 千葉県夷隅郡御宿町上布施768-22
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e.mail:ser.kashiwa@gmail.com
https://www.npo-escot.org

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